研究概要 |
富山県神通川流域カドミウム汚染地域において,昭和21年から30年の間に生まれた,調査時45歳から54歳の女性住民全員を対象に,カドミウムの異常暴露の有無ならびに健康への影響について検討し,以下の新たな知見を得た。 対象者137名中103名から尿を回収した(回収率75%)。糖尿病5人,腎臓病2人,膠原病1人の合計8名を除外し95名について解析した。尿中カドミウム値の地区別平均値は,対照A地区(13人)の2.6μg/gCrに対し,汚染地域B(26人),C(31人),D(25人)の3地区では5.2,5.2,4.0μg/gCrといずれも有意に高値を示した。調査時,対象者が摂取していた精白米中カドミウム濃度を測定した。自家生産米摂取率は,A地区70%,B地区19%,C地区33%,D地区76%であった。自家生産米中カドミウム濃度の平均値は,A地区0.14ppm,B地区0.04ppm,C地区0.07ppm,D地区0.07ppmであり,汚染土壌復元事業の結果,汚染地区の生産米中カドミウム濃度は,対照地区よりも低い値を示したと考えられた。購入米中カドミウム濃度の平均値は,A地区0.12ppm,B,C,D地区はいずれも0.10ppmであり,地区間に差はみられなかった。したがって,汚染地区住民にみられた尿カドミウム値の高値は,調査時点の曝露量ではなく,体内とくに腎臓に蓄積したカドミウムレベルを反映していると考えられた。すなわち,戦後生まれの女性住民においても,カドミウムの異常曝露・体内蓄積が明らかとなった。汚染地区生産米保有者のほうが自家生産米を有しない者より尿カドミウム値は高かった。しかし,自家生産米を有しない者の尿カドミウム値も,対照のA地区より高く,カドミウムの曝露が示唆された。汚染地区生産米保有者の尿α1-ミクログロブリン値が有意に高く,尿細管機能への影響が示唆された。
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