研究課題/領域番号 |
11480139
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
内海 博司 京都大学, 原子炉実験所, 教授 (20025646)
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研究分担者 |
安平 進士 京都大学, 原子炉実験所, 助手 (90311729)
田野 恵三 京都大学, 原子炉実験所, 助教授 (00183468)
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キーワード | ニワトリ白血病細胞株 / DT40 / エルカインド回復 / DNA2重鎖切断 / 相同組換修復 / 端末結合修復 |
研究概要 |
ニワトリBリンパ細胞株、つまり親株(DT40)、DNA二重鎖切断(DSB)修復の相同組換(HR)修復系に関与するRad54遺伝子をノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->)、非相同的末端連結(NHEJ)修復系のKu70遺伝子をノックアウトした細胞株(KU70^<-/->)と、この両遺伝子をダブルノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->/KU70^<-/->)の4種の細胞を用いて、分割照射回復あるいは発見者の名前を冠したElkind回復とも呼ばれている亜致死障害(SLD)回復について検討した。この回復現象は、分割照射法としてがん治療には欠かせない重要な現象であるが、未だ分子レベルのアプローチを拒んできた。特に、別名が「生存率の肩の再出現回復」とも呼ばれているように、生存曲線に肩を持つ細胞系においてのみ見いだされている。このニワトリ細胞系では、親株のDT40細胞は肩を示したが、NHEJ修復系のKu70遺伝子をノックアウトしたKU70^<-/->細胞は、低線量域では非常に感受性だが、高線量域で親株のDT40細胞より抵抗性になり、大きな肩を持つ曲線を示した。線源は、X-線(150kVp)発生装置を用いた。 そして、分割照射回復現象は、HR系が存在する親株とKU70^<-/->細胞株だけに見出された。更に、Elkind回復の特徴である次の3点を検討した。そして、1)分割照射したときに生存率曲線の肩が再出現した、2)分割照射回復は室温(25℃)でも現れた、3)この回復現象は、抗生物質のアクチノマイシンD(Actinomycin D)によって阻害を受けた。以上のことからこのニワトリ細胞で見られた分割照射回復は、エルカインド博士が見出した現象と同じものであることを確認し、Elkind回復がDSBのHR修復系によって修復された結果が細胞死に反映した現象であることを明らかにした。また、このことにより亜致死障害(SLD)とは、相同DNA上のDSBであること、また、HR修復系が無い場合には生存率の肩が見られないことから、生存率の肩とはHR修復系の反映であることが明らかになった。
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