研究概要 |
本研究の3年間に、4種のニワトリBリンパ細胞株{親株(DT40)、DNA二重鎖切断修復の相同組替修復系に関与するRad54遺伝子をノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->)、非相同的末端連結修復系のKu70遺伝子をノックアウトした細胞株(KU70^<-/->)、両遺伝子をダブルノックアウトした細胞株(RAD54^<-/->/KU70^<-/->)}を用いて細胞周期感受性の変動(Gl-early-S期の高感受性やlate-S期の抵抗性)(EMBO J.,17,5497-5508,1998)や分割照射回復(Radiation Res.,155 680-686 2001)及び潜在致死障害の回復現象における2種類のDSB修復形の関与を明らかにした。 本研究を通じて、高線量域でKuノックアウト細胞のほうが親株より放射線抵抗性になる不思議な現象が見つけた。しかしながらNHEJ修復系のKuの代わりにDNAPKcsをノックアウト細胞は高線量域でも親株より感受性になった。DNAPKcsノックアウト細胞では、Kuタンパクが存在するのでDNA二重鎖切断端にKuが結合するがNHEJ系は働けないので、その細胞は死ぬであろう。逆にKuが無いと、DNAに重鎖切断端は全てHR系によって処理されると修復効率が良いだけに、NHEJ系で処理するより生存率が良くなると推定された。この考えを推し進めると、DNAPKcsとKu70遺伝子の二重欠損させた細胞株の表現型は、KU70^<-/->細胞と同じになると期待された。実験してみると、この二重欠損細胞は、KU70^<-/->細胞と全く同じ生存率を示した。以上の結果は、親株のS期/G2期には、HR系とNHEJ系のどちらを使ってDSBを修復するか、NHEJ系のKuタンパクとHR系のRadタンパクが競合していることを示唆した。
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