日本のような国土状況では、廃棄物の焼却は必須であるが、ダイオキシンなど非意図的に生成する化学物質の制御を十分に行うことが求められている。しかしながら、ダイオキシンなどの生成する有害物質が多様であって、焼却炉の操業条件と特定有害物質の放出の相関をマクロ的に解明するといった立場の研究が主流であり、ミクロあるいは分子論的検討が決定的に遅れている。マクロ的な研究情報を補完し、よりミクロ的・分子論的立場から焼却プロセスを理解するために、仮想焼却炉モデルを構築することが本研究の最終的な目的である。実際の焼却炉では、まさに混合状態にある様々な固形物が燃焼している。そこで、本実験では、ある特定した条件下での個別的な廃棄物の燃焼を調べ、燃焼ガス中の化合物の同定を試みた。燃焼条件としては、酸素量、温度を変化させることによって生成ガスをGCおよびGC-MSにより定性・定量分析を行った。試料は汎用のプラスチックであるポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリスチレンを用い、試料量を変化させた燃焼実験の結果、酸素量が十分である場合は発生ガスはほぼCO2であり、試料量が増すとCO2に加え、分解反応によると考えられるCH4、C2H4、COが発生した。紙試料の燃焼においてもCO2、CO、CH4のみの発生が観測された。また、プラスチックの燃焼において、それらの化学組成から燃焼反応による見積もられる完全燃焼がおこる酸素量よりも多いプラスチック試料が存在する場合には、ベンゼン環を含まないポリエチレンでも、排出ガス中にベンゼンが見られ、このようなより高い炭素数への反応が起こることが分かった。
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