1.当研究室の対向ターゲット式スパッタ装置の直流放電・スパッタ特性について調べた。TiターゲットをArとN_2との混合ガス中でスパッタして、TiN薄膜を形成して、その微細構造、電気的特性を測定した。この結果を参考にガスをN_2からO_2に変えて装置の直流放電・スパッタ特性を測定し、TiO_2膜を形成した。 2.プラズマの封じ込めをより強くするためにターゲット電極の最適設計を行った。磁界の発生は磁界分布並び強さ等で一番長いNdFeB永久磁石を用いた。新しいターゲット電極を製作してTiO_2膜を形成した。 3.本実験モデルのスパッタ現象(スパッタ粒子、反跳ガス粒子等の飛散分布、数、エネルギー)の解析をTRIM法によりパソコンを用いて行った。ターゲット面から放出される高エネルギー中性粒子の同定並びにそのエネルギー分布の測定は装置の分解能が低く、複雑な現象のため継続して行う必要があることが示された。 4.1mTorrのガス圧まで安定放電が持続し、ターゲット印加電圧が600Vの条件で膜が形成でき、ターゲット面に垂直な磁界成分の増加により、高エネルギー二次電子の封じ込めが強くなったことを示している。 5.膜厚は0.3μm程度で、表面は極めて平滑であることが示された。これは表面SEM、AFM写真の観察結果とも良く対応していることが明確にされた。また膜(O_2の流量が少ないときはTi金属膜、多いときは透明な膜)の形態がArとO_2の流量比に依存することも明らかにされた。 6.基板温度を上昇しないで形成した膜では、膜厚に関係なく、TiO_2膜はアモルファス構造を示した。 7.基板温度を200度で上昇して形成した膜では、膜厚に関係なく、放電電流の増加(0.1A〜0.3A)とともにTiO_2膜の色は黒から白へと変化し、組成分析の結果、O_2の含有量が多くなることが示された。
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