対向ターゲット式スパッタ装置により多機能光触媒TiO_2スパッタ薄膜を形成し、その構造・特性を調べた。予備実験としてTiターゲットとAr+N_2ガスを用いてTiN薄膜を形成し、装置の直流放電・スパッタ特性並びに膜の微細構造、電気的特性について調べた。 この結果を基にN_2をO_2に変えて装置の直流放電・スパッタ特性を測定し、TiO_2膜を形成した。膜厚0.5μm程度でSEM、AFM写真の結果から、表面は極めて平滑であるが、膜の色調・形態がArとO_2の流量比に依存した。最適条件でのTiO_2形成膜はほぼ無色透明であり、X線回折、ラマン分光分析の測定結果から、アナターゼの結晶構造を示した。基板位置がプラズマに近づくにつれ、膜表面は少し白濁するが、TiO_2結晶子の粒径は増大し、結晶のc軸が基板面に水平に配向することが分かった。膜組成比は定性分析の結果、すべての膜でO_2が化学量論比よりも少なくなっていた。 可視・紫外分光光度計を用いて透過、反射スペクトルを測定し、形成膜の光学的特性を調べた。プラズマの影響が少ない位置での形成膜では、透過率の波長依存性は大きく変化しないが、透過率は波長350nm付近で急激に減少し、350nm以下で透過率は0となっている。これから、形成膜の光学的バンドギャップEgは3.2eVとなりアナターゼ構造TiO_2薄膜の特性を示している。一方、プラズマの影響を受ける位置での場合は、薄膜の波長に対する光透過率がなだらかに変化する結果となり、光吸収端が長波長側へシフトしていることが分かった。 太陽エネルギーを有効に利用するには、TiO_2薄膜の光吸収端波長を350nmよりも長波長側へシフトすること、薄膜の微細構造をポーラスな形態にすること、などが必要であり、形成膜の光吸収の波長依存性をプラズマ中の荷電粒子による基板衝撃作用により改善でき、有効な薄膜形成法であることが示された。
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