研究概要 |
近年,わが国では農地やゴルフ場などで使用される農薬による環境汚染が大きな社会問題となっている。農地やゴルフ場は河川等の水系と密接につながっているので,農薬による水質汚濁を引き起こす危険性が高く,水生生物等の自然生態系への影響が危惧されている。農薬による水質汚濁を防止するためには,農薬を含有している土壌を白色腐朽菌を用いて直接処理することが最も効果的な方法と考えられる。白色担子菌によるリグニン分解酵素の生産ためには酸素供給が必要であるが,従来までの攪拌混合培養は菌への強いせん断力のために農薬分解酵素の生産を阻害する。それゆえ,リグニン分解酵素の効率的生産のためにはせん断力のない固定化培養を行う必要がある。本研究では,白色腐朽菌の一つであるヒラタケP.ostreatusを用いた固定化培養によってリグニン分解酵素を効率的に生産するための培養条件とリグニン分解酵素による農薬2,4-Dと2,4,5-Tの処理について検討した。p.ostreatusによるリグニン分解酵素、マンガンパーオキシダーゼ(MnP)とラッカーゼ(Lac)の生産が固定化菌糸の担体としてポリウレタンフォーム(PUF)を用いて実験的に研究された。2つの酵素の最大活性は以下の培養条件下(PUFの個数40個、pH4.5、温度30℃,グルコース濃度20g/l)でそれぞれ500と80U/mlであった。農薬2,4-Dと2,4,5-TはP.ostreatusからのリグニン分解酵素で処理すると50hの培養で約50%、P.ostreatus,B.adustaとP.chrysosporiumからの混合酵素で処理すると30hの培養で約70%減少した。
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