研究概要 |
プレニル基転移酵素はイソペンテニル二リン酸を順次縮合する一連の重合酵素の総称であり,イソプレノイド生合成の鍵中間体であるプレニル二リン酸を生成する.これまでの一連の研究において,我々は変異導入により酵素機能が変化した変異型酵素を複数見出すことで,生成物鎖長を制御している領域を推定するに至った.本研究ではそれらの知見を踏まえ,さらに分子モデリング技術を利用して,同酵素群の生成物鎖長制御機構の確立を試みた.炭素数35の生成物を与えるヘプタプレニル二リン酸合成酵素はヘテロダイマー酵素であり,一方のサブユニットのみがこれまで我々が対象としてきたホモダイマー酵素に相同性を持つ.本酵素に対し,他酵素から得られた知見に基づき部位特異的変異を導入することで,その生成物鎖長変換に成功した.これにより我々が提唱した,生成物の炭素鎖がプレニル基転移酵素に共通する基質結合サイト,DDXX(XX)D配列の存在するαヘリックスに沿って伸長し,このαヘリックス上の嵩高いアミノ酸側鎖にブロックされて酵素から解離する,という機構がより普遍的なものであることが明らかになった.さらに同酵素のモデリング分子を構築することで,生成物をブロックするアミノ酸を立体的に支えていると考えられるアミノ酸を見出した.その置換によっても生成物鎖長を変化させることができ,モデリングの妥当性を証明できた.また,機能変換実験の新たな対象として,高度好熱性古細菌より新規なプレニル基転移酵素を遺伝子クローニングすることができた.
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