研究概要 |
1.プレニル基転移酵素の生成物鎖長変換を目的として,炭素数15の生成物を与えるファルネシル二リン酸合成酵素に部位特異的変異を導入した.変異導入箇所は過去の知見から,基質結合部位である第1アスパラギン酸リッチ配列の近傍とした.その結果,同酵素の機能を改変し,炭素数10のゲラニル二リン酸を合成する変異型酵素を作製することに成功した.この結果はプレニル基転移酵素の生成物鎖長制御機構に関する我々の仮説を強く支持するものであった.また,ゲラニル二リン酸はモノテルペンの前駆体であるため,この変異型酵素に関しては今後の工業的応用が期待される. 2.炭素数35の生成物を与えるヘプタプレニル二リン酸を,過去の知見をもとに改変し,より短鎖,もしくはより長鎖の生成物を与える変異型酵素を作製した.同酵素は,他のプレニル基転移酵素と4次構造が異なる中鎖型酵素に分類されているが,今回の結果から,中鎖型酵素もプレニル基転移酵素に共通の生成物鎖長制御機構を有していることが明らかとなった. 3.酵素機能改変の新たな研究対象として,複数の新規なプレニル基転移酵素の遺伝子クローニングを行った.その中にはこれまで知られていなかったタイプの生成物特異性を持つ酵素も含まれており,その機能の解明および変換はプレニル基転移酵素の研究に対してきわめて有益な知見を与えるものである.さらにそれらは全て好熱性微生物に由来する耐熱性酵素であるため,酵素の熱安定性に関する知見も期待できる.
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