研究課題/領域番号 |
11480163
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
林 高史 九州大学, 工学研究院, 助教授 (20222226)
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研究分担者 |
水谷 義 京都大学, 工学研究科, 助教授 (40229696)
嶌越 恒 九州大学, 工学研究院, 助手 (00284539)
久枝 良雄 九州大学, 工学研究院, 教授 (70150498)
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キーワード | ヘムタンパク質 / ミオグロビン / ヘム / 金属ポルフィリン / 再構成 / タンパク質複合体 / 酸素錯体 / 酸化反応 |
研究概要 |
本年度は、これまでの知見をもとに、以下の3つの研究を推進した (1)新たな生体触媒を創製するために、ミオグロビン表面に基質認識部位を構築し、過酸化水素存在下の酸素化反応を追跡した。その結果、天然のミオグロビンでは殆ど反応の進行しないスチレンのエポキシ化、スルフィドの酸素化などが円滑に進むことが実証された。したがって、タンパク質表面に適した基質認識部位を構築することにより、新しい生体触媒の開発につながることを示した。 (2)昨年度まで実施していたミオグロビン-チトクロムc人工複合体の系を、他のタンパク質複合体の構築へ展開した。タンパク質表面に、正電荷・負電荷を修飾することにより、様々な組み合わせのタンパク質複合体、例えばミオグロビン2量体、ミオグロビンチトクロムb562、チトクロムb562-チトクロムc、ヘモグロビン-ミオグロビン、ヘモグロビン-チトクロムcなどの複合体を得て、それぞれのタンパク質間での電子移動反応の追跡を行った。 (3)ミオグロビンの補欠分子として、ポルフィリンの構造異性体であるポルフィセン骨格を有する鉄錯体を挿入して、青色の再構成ミオグロビンを得た。このミオグロビンの酸素結合能を詳細に評価した結果、天然のミオグロビンに比べ、約1400倍の酸素親和性があり、さらに、生理学的には好ましくない酸素錯体の自動酸化速度も天然に比べ1/7に減少し、酸素錯体自身も極めて安定であることが示された。今後、この再構成ミオグロビンが酸素センサーや人工血液としての応用が期待される。 以上、本研究を通じて有機合成化学的手法を駆使したヘムタンパク質の新しい機能化を提案した。この手法は、タンパク質のアミノ酸残基の遺伝子工学的変換とともに、今後の生物無機化学、タンパク質工学に対する斬新なアプローチとして有用と考えられる
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