研究課題/領域番号 |
11480167
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研究種目 |
基盤研究(B)
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
石川 雄一 九州大学, 有機化学基礎研究センター, 助教授 (30184500)
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研究分担者 |
吉見 剛司 大分大学, 工学部, 助手 (90284786)
佐々木 健夫 大分大学, 工学部, 助教授 (80261501)
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キーワード | 遺伝子複製 / 自己複製 / 脂質膜の分裂 / 多重リン酸構造 / カルジオリピン / DnaAタンパク質 |
研究概要 |
カルジオリピンCLは、二つのリン酸基と四本のアルキル鎖を持った天然脂質である。二分子膜の形成には、この二重化した構造は必要なく、その界面コロイド的な存在意義は不可解である。本研究では、脂質における「多重リン酸」構造が、生理活性を与える上で有効である事を遺伝子の複製を開始するタンパク質DnaAの機能との関係から示した。 DnaAはATPと結合することで複製開始活性を持つ。我々は、天然脂質に限らず合成リン脂質でもDnaAからATPを解離させうる事を認めた。ATPの解離初速度と添加脂質濃度との動力学的関係から、多リン酸脂質はミカエリスーメンテン式に従い、一分子でDanAからATPを解離させうるのに対し、モノリン酸脂質はHill式に(n>1)従い、複数分子で初めてATPを解離させる事を見い出した。この事実から「DnaAの効果的な機能制御、すなわちATPへの親和性低下には、DnaAタンパク質のアミノ酸二次構造のある狭い領域にリン脂質が二つ以上同時に結合する。この際、リン酸が膜表面で濃縮した状態を最初から持つニリン酸脂質は特異的に結合する」と仮定し実験を進めた。まず、二つのリン酸部位をつなぐ架橋部分の構造が最も重要であるとしてリン酸基間の距離をスペーサーメチレン鎖により制御した二リン酸脂質の合成方法を確立した。さらに、この二リン酸脂質は、その親水基である二つのリン酸基が協同的に作用して DNA 複製開始タンパク質に結合するためであり、タンパク質側にもそのための受容部位がある事を認めてた。リン酸基の間隔が、狭くても広がり過ぎても効果的なタンパク質への結合は抑えられ、二つのリン酸基間の距離と空間配置が、ATP結合性タンパク質の認識に影響する。このような、自己複製能を制御できる脂質膜は、遺伝子複製と細胞膜の分裂増殖の同調の観点から、とりわけ重要である。
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