研究概要 |
プロテアソームは、広く真核生物の核および細胞質に存在する高分子プロテアーゼで種々のユビキチン化蛋白の分解はじめ、細胞周期・免疫・炎症・受精・アポトーシスおよびストレス応答などきわめて多方面に機能する多機能性プロテアーゼである。我々は、これまで血漿蛋白質をモデルとして、遺伝性の変異蛋白質あるいは薬物誘導による変異蛋白質が、生合成後の分泌過程において、小胞体の品質管理機構により選択的に分解されること、さらに、その分解がプロテアソームによるものであることを明らかにしてきた。 本研究は、我々が世界に先駆けて精製に成功したラット肝ミクロソームからの2種類の膜会合性および結合性のプロテアソーム(それぞれERaプロテアソームおよびERbプロテアソームと命名)の構造的・酵素的化学的性状を詳細に解析して、細胞質プロテアソーム(20S)との相違点を明らかにすると共に、小胞体プロテアソームに特有のサブユニットの構造を決定して、上記の小胞体の品質管理機構における機能を明らかにすることを目的とする。 今年度は、以下のことを明らかにした。 1.ERa,ERb共に、SDS-PAGE上では、20Sと同様に多数のサブユニットからなり、区別が出来なかったが、2次元PAGE上では、それぞれのプロテアソームに特異的な幾つかのサブユニットも検出された。 2.合成ペプチド基質に対する活性は、いずれもほとんど差が認められなかったが、20Sに特徴的な低濃度のSDS存在下での活性の増進は、ERa,ERbでは、更に、顕著に認められた。 3.小胞体膜組成のリン脂質存在下での活性の増強もERb>ERa>20Sの順となり、ERb、ERaの膜結合依存性の活性化が示された。 4.タンパク質基質では、ERbにのみbカゼイン水解活性が認められ、変性リゾチームを気質とした場合にも、ERbにもっとも強い分解活性が認められた。
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