本研究は、我々が世界に先駆けて精製に成功したラット肝ミクロソーム膜結合性(ERb)プロテアソーム(以下、ERb)の構造的・酵素化学的性状を詳細に解析して、細胞質プロテアソーム(20S)との相違点を明らかにすると共に、ERbに特有のサブユニットの構造を決定して、小胞体品質管理機構における機能を明らかにすることを目的としたもので、今年度はERbのサブユニット構造を詳細に解析し、以下のことを明らかにした。 1.逆相HPLCによる比較から、ERbには、20Sのサブユニットβ2とα5以外に極性の異なるサブユニット(それぞれをBとLと呼ぶ)が存在することがわかった。 2.β2とBの2次元電気泳動での比較では、Bはβ2よりも酸性側にシフトしていたが、その差はリン酸化によるものであった。また、α5とLは2次元電気泳動で若干の差異が認められたが、ほぼ同一であることが確認出来た。 3.Bのリジルエンドペプチダーゼ消化物のMALDI-TOF/MSでの比較ではβ2とほぼ同じパターンを示した。 4.α5とLのN末端配列分析の結果、α5のN末端は前駆体のN末端のMet-Phe-Leuが除かれた後のThrであるのに対して、LのN末端はブロックされていた。MALDI-TOF/MSの結果を合わせて考えると、LのN末端はα5の前駆体のN末端のMetがアセチル化されたものであることが示唆された。 以上の結果、ERbには、β2以外にβ2と極性と等電点が異なるBが、また、α5以外にα5とN末端の構造が異なるLが存在した。すなわち、20SとERbの間で、少なくとも2つのサブユニットの一方に、構造の異なるものが存在し、これがERbの膜結合性を担っている可能性が示唆された。
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