研究分担者 |
三木 俊明 東京都医学研究機構, 東京都臨床研, 研究員 (10239204)
青木 和久 東京都医学研究機構, 東京都臨床研, 研究員 (00280785)
坂口 政吉 工学院大学, 工学部, 助手 (80281351)
石田 信宏 東京都医学研究機構, 東京都臨床研, 研究員 (20291148)
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研究概要 |
糖ヌクレオチド輸送体ファミリーの全体像を明らかにし、輸送体機能とその分子的基礎、および、輸送体の生理的役割を総合的に解明することを目的として研究を行い、以下の成果を得ることができた。 (1)UDP-Gal輸送体関連遺伝子として、新たにヒトUGTrel7およびショウジョウバエUST74Cを同定し、出芽酵母細胞中で発現させることにより、輸送基質を同定した。前者はUDP-GalNAc, UDP-GlcA, UDP-GlcNAcを、また後者はUDP-Sugar全般を基質とする、いずれも多重特異的な輸送体であった。これらの輸送体はグルクロン酸抱合への関与を通じて解毒作用に、あるいはプロテオグリカン合成を通じて胚発生過程に関与する可能性があり、その生理的役割および制御機構の解明に強い興味が持たれている。 (2)UDP-Gal輸送体およびCMP-Sia輸送体の間の相同性を利用して両者の間のキメラタンパク質を構築して基質特異性について検討した結果、UDP-Gal, CMP-Siaの両者を認識して輸送することができる二重特異的輸送体が見いだされたことから、二種類の基質を認識するモチーフが相互に排他的ではなく、機能的に両立しうるものであることを明らかにした。これは多重特異的輸送体の存在とも関連して、注目すべき事実である。 (3)大腸がん患者のがん組織において、UDP-Ga1輸送体mRNAの発現が特異的に昂進していることを明らかにした。UDP-GlcNAc, CMP-Sia輸送体mRNAの発現量には有意差はない。UDP-Gal輸送体の発現は特に浸潤、転移のあるhigh stageの患者で有意に高く、sialyl LeA, sialyl LeXの発現の増加と関連していた。大腸がんの血行性転移に関わるこれらの糖鎖抗原の発現量がUDP-Gal輸送体レベルによって規定されていることを示すこの事実は、糖ヌクレオチドの供給量を介する細胞表面糖鎖構造の制御を示す最初の例として重要である。
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