研究概要 |
ヒトのCMP-NeuAc水酸化酵素遺伝子は92bpの一つのエクソンに相当する配列が欠失していることが原因で、酵素活性を発現できず、ヒトの組織ではN-グリコリルノイラミン酸(NeuGc)が発現されない。この欠失により作られる不完全な蛋白質の実体は明らかでなく、これを明らかにするために、N末端、C末端に対するポリクローナル抗体の作成を行っている。92bpの欠失が生じた原因を明らかにするために、チンパンジーの遺伝子で92bpに相当する部分の5'及び3'フランキング領域イントロン塩基配列を解析中である。NeuGc発現に多型を示すマウスの亜種間の交配を行い、それぞれの個体から臓器を採取し、遺伝学的解析を行った。同時に肝臓の酸性糖脂質の構造解析を行い、亜種ではNeuAcを持つGM1,Gdlaが主要酸性糖脂質であることを同定した。雑種第1代ではNeuGcを持つGM1,NeuGcを2モルもつGdlaが主要酸性糖脂質となっている。F1を亜種に戻し交配して得られた個体は、2つタイプに分離し、NeuGc含有糖脂質を発現できない個体はCMP-NeuAc水酸化酵素活性を発現できないことを確認した。このことは、亜種がCMP-NeuAc水酸化酵素発現に関して劣性の遺伝変異を持つことを示している。亜種の変異がヒトの変異に対してどのような関係にあるかあるかを明らかにするために、亜種マウスの水酸化酵素遺伝子に関する解析を行っている。
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