研究概要 |
1.出芽酵母から,26Sプロテアソームの活性を制御する制御サブユニット複合体(19S複合体)を簡便かつ高純度に単離する方法を確立した.即ち,20Sプロテアソームに対する抗体を固定化したカラムを用いて,酵母抽出液を抗体カラムに添加して洗浄後に,ATP, Mg^<2+>を除いた緩衝液あるいは食塩によって19S複合体を特異的に溶出させ,次に,酸性条件下で20Sプロテアソームを溶出させる方法である.この方法は,少量の酵母から活性を保持した19S複合体を簡単に単離できる利点がある.2.上記1の方法を用いて,定常状態まで増殖させた出芽酵母の野生株および制御サブユニット(Rpn9とRpn10)欠損株から19S複合体を単離し,それをさらに二つのサブ複合体(Lid複合体とBase複合体)に解離させる方法を検討した.そして,イオン交換クロマトグラフイーにより二つのサブ複合体に解離できることを見いだし,それらのサブユニット組成を解析し,Rpn9がLid複合体の中心付近に存在すること,また,Rpn10がLid複合体の構成成分であること,即ち,Lid複合体がマルチユビキチン鎖を認識する活性を有していることを明らかにした.3.対数増殖期の出芽酵母から19S複合体を単離しようと試みたが,上記1の方法では大量に得るに至っていない.現在,より効率の良い単離法を検討中である.4.上記1の方法で単離した20Sプロテアソームと通常の数段階の精製法で調整した20Sプロテアソームのサブユニット構成を比較し,一つのサブユニットの電気泳動での移動度が異なることを見いだした.そのサブユニットについてMALDI-TOF-MSによる解析を行い,それがα7サブユニットであり,そのC末端ペプチドの3ケ所がリン酸化されていることを明らかにした.
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