1.昨年度の研究成果から、出芽酵母26Sプロテアソームの活性を制御する19S複合体が、Lid(蓋部)とBase(基底部)の2つのサブ複合体からなり、Rpn10が両サブ複合体をつなぎとめている役割を果たすことが明らかになった.そこで、26Sプロテアソーム構築に対するRpn10の役割を調べた.RPN10遺伝子の完全破壊株(Δrpn10株)およびC末端欠失株(rpn10ΔC株)を作製して増殖を調べたところ、Δrpn10株およびrpn10ΔC株とも生存可能であるが、いずれの株でも増殖が少し遅いことが明らかになった.一方、ゲル内活性染色法を用いてΔrpn10株およびrpn10ΔC株での26Sプロテアソーム量を比較したところ、rpn10ΔC株では野生株とほぼ同じ量の26Sプロテアソームが構築されていたが、Δrpn10株では26Sプロテアソームがほとんど構築されていないことが明らかになった.さらに、Δrpn10株を用いて増殖に伴う26Sプロテアソーム量の変動を解析したところ、ゲル内活性染色法では低いレベルで常に一定であったが、溶液状態での活性は野生株と同様に変動することが明らかになり、その原因がΔrpn10株で26Sプロテアソームの凝集が起きているためであることを明らかにした.2.RPN10遺伝子は、rpn12-1株の温度感受性を多コピー抑圧する遺伝子として同定された遺伝子である.そこで、RPN10の各種欠失変異体を作成してrpn12-1株に導入し、その温度感受性を抑圧するか否か、また、26Sプロテアソームの動態を調べた.その結果、各種変異体の中で、rpn10ΔCのみが抑圧効果を示し、また、その場合のみ26Sプロテアソームの構築が認められた.即ち、Rpn10のN末端ドメインが26Sプロテアソーム構築に重要な役割を果たしていることを明らかにした.
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