急速凍結フリーズレプリカ法を駆使した滑り運動中のダイニン分子の高分解能構造解析

1999 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11480185
• 研究種目: 基盤研究(B)
• 研究機関: 東京大学
• 研究代表者: 片山 栄作 東京大学, 医科学研究所, 助教授 (50111505)
• 研究分担者: 真行寺 千佳子 東京大学, 理学系研究科, 助教授 (80125997)
• キーワード: 急速凍結電子顕微鏡法 / フリーズ・ディープエッチレプリカ法 / ダイニン / 微小管 / コンフォメーション変化 / 3次元像再構成 / 1分子生理学 / 構造生物学

研究概要

本研究においては、これまでミオシン・クロスブリッジの動的構造解析で大きな成功を収めたin vitro滑り運動アッセイ系と急速凍結フリーズレプリカ法との組み合わせをダイニン/微小管系に適用することにより、微小管上で滑り運動を行っているダイニン分子の高分解能レプリカ像を得てその3次元構造を決定し、機能中の構造変化の様子から滑り運動の分子機構を探ることを最終目標としている。そのためには、目的に合致したダイニン/微小管の滑り運動系を工夫すること、そして、新たに開発中の手法を用いて、電子顕微鏡内でレプリカ試料を傾斜撮影して得られた多数の像から3次元像を再構成するという2つの項目を達成する必要がある。第1の目標に関しては、高い運動活性を有するダイニンを調製することがなかなか困難であり、残念ながら、未だに十分に納得の行くダイニン標品は得られていない。現在、調製過程の問題点を逐一検討中である。第2の目標の達成に必須となるレプリカ試料からの3次元像再構成の手法はほぼ完成に近づき、かなり実用的なものとなってきた。実際には、可能な限り広い傾斜角で撮影した電子顕微鏡像を高精度でディジタル化してコンピュータに取り込み、多くの画像を精密に位置合わせした後に逆投影法で再構成する。初期の再構成像は電子顕微鏡観察の宿命である試料傾斜の死角の存在のために高さ方向の精度が不足しているので、視差測定の併用により各部位の精密な高さを測定して補完するというものである。再構成画像を、アニメーション化した元の電子顕微鏡像と良く比較して元の画像にないゴーストを除くとともに、ダイナミック・シェル・モデリング法を用いて更に精度を高める。このような手法を、以前撮影した滑り運動中のアクトミオシンの画像に適用した結果、サブドメイン構成を反映した明瞭な3次元像を得ることに成功した。この方法は、ダイニン/微小管系にもそのまま適用できるはずである。

研究成果

• [文献書誌] Sakakibara,H.: "Inner-arm dynein subspecies c of Chlomydomunas flagella is a single-headed processive motor with strain sensitivity"Nature. 400(6744). 586-590 (1999)
• [文献書誌] Ito,K.: "Cooperativity between twoheads of Dictyostelium myosin II in in vitro motility and ATP hydrolysis"Biophysical Journal. 76(2). 985-992 (1999)
• [文献書誌] Murayama,T Oba,T. Katayama,E (equal contribution): "Further Characterization of the type 3 ryanodine receptor (PyR3) purified from rabbit diaphragm"Journal of Biological Chemistry. 274(24). 17297-17308 (1999)
• [文献書誌] Konishi,M.: "Structure and enzymatic properties of genetically truncated forms of the water-insoluble glycan-synthesizing glycotransferase from Strepto coccus sobrinus"Journal of Biochemistry. 126(2). 287-295 (1999)
• [文献書誌] Tobe,T.: "A novel chromosomal locus of enteropathogenic Escherichia coli(EPEC), which encodes abfpT-regulated chaperone-like protein, TrcA, involved in microcolony formats by EPEC"Molecular Microbiology. 33(4). 741-752 (1999)
• [文献書誌] Yamane,K.: "Retinoblastoma susceptibility protein, pR6, possesses multiple BRCT-Ws, BRCA1 corboxyl-terminus-related W regions with DNA break-binding activity"Oncogene. (in press). (2000)