研究課題/領域番号 |
11480187
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
川戸 佳 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 教授 (50169736)
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研究分担者 |
筒井 和義 広島大学, 総合科学部, 教授 (20163842)
木本 哲也 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (60292843)
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キーワード | 海馬 / 神経ステロイド / 記憶・学習 / チトクロムP450c17 / エストラジオール / DHEA / LTP / カルシウム |
研究概要 |
今年度、我々はラットの海馬が、デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)と17β-エストラジオールの合成を行っていることを、HPLC分析によって明らかにした。Radioimmuno Assayを用いたステロイド産生測定でもエストラジオール合成を証明した。特にDHEAがチトクロムP450c17によって合成されることを世界の常識を破って初めて示した。本年度までに神経ステロイドとしてコレステロール→DHEA→エストラジオールまでの合成が行われていること、更に合成酵素であるチトクロムP450scc→P45017α→P450aromが全て海馬に存在していることを明らかにすることができた。また、StAR蛋白がミトコンドリア外膜に存在し、Ca信号に駆動されて内膜にコレステロール搬入することも発見した。 一方、エストラジオールの海馬神経細胞に於ける急性的作用を解析した。1-100nMのエストラジオールのみを投与すると、数秒〜1分という短時間の間に一過性の細胞内カルシウム信号が発生することを発見した。エストラジオールをBSAに共有結合させたBSA-エストラジオール(細胞膜を通過しない)によっても同様の信号が観察されたこと等から、エストラジオールの急性作用は、核内受容体を介したものではなく、細胞膜上の作用部位を介していることがわかった。またエストラジオールは、海馬スライスに於いて100Hz刺激でシナプス伝達の長期増強(LTP)をかかりやすくすることが電気生理的に確かめられた。現在、この分子論的な機構を解析している。
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