典型的な膜タンパク質であるバクテリオロドプシンを対象として、実験・理論の両面から検討を重ねた結果、構造を粗視化した考え方で構造形成の問題を取り扱うと、非常に現実的な構造を再現できることが分かってきた。この研究を発展させ、バクテリオロドプシンを対象として、代表的な機能中間体(M、N、O中間体)と基底状態のそれぞれについて、変性キネティクスの測定を行い、それから安定性の実験を行う。さらに、各中間体での構造をコンピュータで再現し、様々な実験結果と比較検討することによって、機能のメカニズムを明らかにすることを目的とした。 機能中間体の安定性(準安定状態の安定性)と中間体からの変性を現象をつかまえる実験システムを確立するために、光誘起変性と中間体で構造を止める条件下での有機溶媒変性を組み合わせた実験を行った。アルコールを中心とした有機溶媒は膜タンパク質を効果的に変性させるが、基底状態と中間状態でどのように安定性が違うかを調べることは機能のメカニズムを知るために本質的である。中間体の構造安定性を調べるシステムを完成し、実際に様々な条件下での測定を行った。また、あらたに見出した熱変性中間体についても、安定性の測定を行った。従来考えられていたよりかなり低い温度で構造変化が起こり、変性の温度と光誘起変性の温度が異なることがわかった。計算はプローブヘリックス法を用いたヘリックス間極性相互作用の評価を行い、最安定状態を求める予定であったが、十分な結果は得られなかった。
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