脳の計時機構により支配されている生体リズムは生命の恒常性を維持する概日時計と、種の保存を維持する生殖時計があるが、後者は年周性という長期現象ということもあり、その細胞・分子レベルの研究は進んでいない。我々は原索動物マボヤが6時間の暗保に続く明刺激により4時間後に配偶子放出をすることに注目し、生殖時計の光による調節機構の研究を始めた。頭神経節を細胞外記録法により研究した結果、光に応答する過分極性の緩電位を記録した。これは光受容細胞によると考えられる。交流法で記録したところGnRHニューロン(性腺刺激ホルモン放出ホルモンニューロン)特有の規則的自発活動現象が光により抑制されることを明かとした。そこで光受容細胞とGnRHニューロンの頭神経節における局在を明らかにする事を目指した。レチナールタンパク質イメージング法とタコロドプシン抗体による免疫組織学的手法でレチナールタンパク質が頭神経節の局在していることを明らかにした。同じ頭神経節におけるGnRHニューロン(性腺刺激ホルモン放出ホルモンニューロン)の存在が哺乳動物のGnRH抗体を用いた免疫組織学的手法により示されていた。これらの結果から光受容細胞とGnRHニューロンは異なり、光受容細胞で受けた光信号がシナップスを通してGnRHニューロンに情報を伝えることが明かとなった。
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