mRNAの核から細胞質への輸送は、真核生物の遺伝子発現において重要な過程であるが、末端修飾やスプライシング等のプロセシングと輸送の関わりについてなど、そのメカニズムについては不明な点が多い。これを明らかにするため、細胞の核内におけるmRNA1分子の動きと局在を共焦点顕微鏡でビデオ観察した。さらに、1分子のmRNAのスプライシングをリアルタイムで検出するための1分子分光イメージング法を開発した。 (1)mRNA1分子の核内運動のイメージング ヒトβ-globin部分遺伝子のmRNA(540塩基、2つのエキソン、1つのイントロン、cap、polyAを含む)を調製し、平均10〜15分子のCy3で蛍光標識した。これを核にマイクロインジェクションし、蛍光像をビデオレートで観察した。細胞内の蛍光分子を局所励起するため、共焦点顕微鏡を用い、YAG2倍波(532nm)を励起光源として、ICCDで観察した。その結果、核内でのmRNA1分子の動きを観察することができた。mRNAは「動いているもの」、「止まっているもの」が、それぞれ50%の割合で観察された。止まっているmRNAは平均30秒で動き始めた。動いているmRNAの運動を解析したところ、平均の拡散定数は0.2[μm^2/s]でブラウン運動していた。この値は、水溶液中で測定した値の約1/40であった。mRNAの核内輸送が能動的な輸送でなく拡散によることを支持する結果となった。 (2)mRNA1分子のスプライシングの1分子分光イメージング 蛍光核内運動のイメージングヒトβ-globin部分遺伝子のmRNAの2つのエキソンと1つのイントロンを異なる3つの蛍光色素で標識した試料を作製した。これを分光することにより、スプライシングしたmRNAとしていないmRNAを1分子ごとにリアルタイムで区別できた。
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