研究課題
単細胞性のシアノバクテリアSynechocystis PCC6803株においては、数年前にかずさDNA研究所により全ゲノム配列が決定され、4種のグループ2シグマ因子(sigB, sigC, sigD, sigE)の存在が明らかになっている。これらは広範なシアノバクテリアにおいて保存されており、それぞれ何らかの普遍的なシアノバクテリア機能に対応すると考えられる。本年度の解析で、sigD promoter-luciferase融合遺伝子を用いた解析により、sigDのストレスによる発現誘導が、二成分制御系のヒスチジンキナーゼであるHik33の制御下にあることが判明した。Hik33は低温センサーとして同定されている因子であるが、高浸透圧、塩などのストレスにおいてもSigDの転写誘導に関わることが明らかになった。さらに、sigD遺伝子産物が強光ストレスでも誘導を受けることが、蛋白質レベルの解析で明らかになった。しかし、脂肪酸の不飽和化酵素であるdesB遺伝子の誘導経路にあるHik19、Rer1遺伝子欠損の影響は見られず、Hik33からのシグナル伝達経路の多様性が示唆された。一方、各シグマ因子特異的な抗体を用いた発現解析の結果、sigB遺伝子産物が、熱ショックにより顕著に誘導されることが判明した。sigCについては、増殖定常期におけるglnB遺伝子の転写への関与が示唆され、増殖定常期における遺伝子発現への関与が考えられた。
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