昨年度までにショウジョウバエ初期胚から、GAGA因子と相互作用する2つのタンパク質p93とp130を同定し、そのcDNAをクローニングした。これらのcDNAを大腸菌で発現して精製したタンパク質を用い、p93とp130が複合体を形成すること、GAGA因子と直接結合するのはp93であること、またp93-p130複合体はヌクレオソームに結合することを見出した。これらの成果をふまえて研究を行い、本年度は以下の成果を得た。 (1)p93-p130複合体が、クロマチンリモデリング因子の触媒サブユニットであるISWIによるヌクレオソームのスライディングを促進することを発見した。 (2)ヨーロッパのグループにより、GAGA因子をコードするTrl遺伝子とホメオチック遺伝子Ubxの間に遺伝学的相互作用が報告されている。我々は遺伝的バックグラウンドによってはこの相互作用を検出することが難しいことに気づき、この相互作用の検出に適したTrlとUbxの変異系統を確立した。 (3)ショウジョウバエp130遺伝子の変異系統を確立した。それと上記のUbx変異系統を用いることにより、p130とUbx間に遺伝学的相互作用を見出した。これらの結果から、GAGA因子に依存したクロマチンリモデリングがUbxの発現に関与する可能性を提起した。
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