細胞の形態、運動、極性、細胞質分裂等は、あらゆる細胞にとって基本的な細胞機能であり、その分子機構の解明は細胞生物学上非常に重要な研究課題である。アクチン細胞骨格系はこれらの細胞機能に必須な役割を果たすが、アクチン細胞骨格の再編成の分子機構には不明な点が多い。アクチン細胞骨格の再編成は、アクチンのモノマーからポリマーへの重合過程や、形成されたフィラメントの再編成の過程からなる。今回、アクチン繊維の再編成への関与が示唆されるタイプIミオシンモーターの作用機構について解析して以下の成果を得た。 (1)アクチン系を制御する遺伝子群の単離:ヒトWASP(Wiskott Aldrich Syndrome Protein)ホモログであるLAS17やタイプIミオシンモーターであるMYO5が、アクチン細胞骨格の再編成を制御していることが明らかにされている。今回、MYO5と遺伝学的に相互作用する新規遺伝子やMYO5と相互作用する新規タンパク質の単離に成功した。現在、これらの遺伝子について、細胞生物学的、遺伝学的に解析中である。 (2)アクチン系を制御するBNI1の作用機構:BNI1変異は核分裂の方向に異常を示すことから、微小管機能の異常も示唆されていた。BNI1変異と合成致死となる変異を単離し、これが微小管機能を制御するダイナクチンコンポーネント、PAC1とPAC10であることを明らかにした。BNI1が直接、あるいはアクチン系を介して微小管系を制御していることが示唆された。
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