アクチン細胞骨格は、細胞の運動や形態、また、細胞極性等を制御しており、そのメカニズムの解明は、細胞生物学上重要な研究課題である。アクチン細胞骨格の再編成は様々な蛋白質によって時間的にも空間的にも複雑に制御されており、その分子機構の解明は酵母のように遺伝学的、生化学的、細胞生物学的な解析系が洗練されている系が好適である。本研究では、アクチン系の制御が示唆されているタイプI型ミオシンの解析を通して、アクチン系を制御する新しい遺伝子の単離に成功した。 タイプI型ミオシンMyo5の温度感受性変異myo5-360の温度感受性の増殖を高発現状態で抑圧する遺伝子としてCDC50を単離した。CDC50は膜貫通蛋白質をコードし、そのホモログはヒトをはじめ高等動物に保存されているが、その機能については全く明らかにされていない。CDC50蛋白質はendosomeに局在し、細胞内小胞輸送に関与していることが示唆された。Cdc50の遺伝子破壊株は低温感受性の増殖を示し、出芽途中で増殖を停止することが明らかとなった。Cdc50破壊株の細胞のアクチン細胞骨格を染色したところ、正常細胞では極性を保って局在しているcortical actin patchが、分散してしまっていることが明らかとなった。この結果と、CDC50がミオシンの変異を抑圧できる結果から、CDC50は、アクチンの局在化を制御する蛋白質の輸送に関与している可能性が高いと考えられた。 このように、本研究では、アクチン細胞骨格を制御する新規の遺伝子を発見し、着実に進展させることができた。
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