(1)モエシンとラディキシンの遺伝子のノックアウト:ERM蛋白質の個体での機能を調べるために、ERM蛋白質の遺伝子をノックアウトしたマウスの作製を行った。まず、エズリン、ラディキシン、モエシンのうち、比較的ユビキタスに発現していて、遺伝子がX染色体上にのっているモエシンを最初のターゲットとし、モエシン遺伝子をノックアウトし、モエシン欠失マウスを作製することに成功した。しかし、このマウスは、調べ得る限りは、何の異常もなかった。そこで、次に、ラディキシンの遺伝子を破壊して、ラディキシン欠失マウスを作製した。このマウスは、肝臓に広範な細胞死が見られ、直接ピリルビンが上昇した。その分子機構を解析中である。 (2)メルリンの機能解析:メルリンは、神経線維腫症2型の原因癌抑制遺伝子の産物として同定されたもので、そのN末端半分がERM蛋白質に酷似している。しかし、なぜ、このような増殖抑制の機能を持つ筈の蛋白質が、細胞膜とアクチンフィラメントの結合にかかわるERM蛋白質と似ているのかは、依然として謎のままである。そこで、ERM蛋白質の解析の経験をもとに、メルリンの機能を詳細に検討した。本年度は、以下の点を明らかにした。メルリンは、培養上皮細胞に導入した時に、ERM蛋白質よりもカドヘリンとよく似た分布をすること。メルリンはCD44などのERM結合膜蛋白質と結合できること。メルリンはRhoの制御因子であるRhoGDIと結合し、その活性を抑制すること。
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