研究概要 |
本研究は、枯草菌の細胞周期を構成する染色体複製、染色休分配や細胞分裂に関与する因子の細胞内動態を細胞生物学的手法により調べると共にこれらの因子間の相互作用も解析し、細胞周期の制御機構を解明することを目的とし、以下の新知見を得た。 (1)枯草菌の染色体複製は、開始蛋白質DnaAと複製開始点oriCの複合体形成に始まり、DnaB, D, I蛋白質により、DnaCヘリカーゼが導入される。DnaIはDnaCと、DnaDはDnaAと相互作用することを明らかにした。 (2)DnaAは細胞質に分布するのに対し、DnaB, IはoriCと同様に核様体の周辺部に局在すること、DNAポリメラーゼが複製開始時にその位置に移動することを明らかにし、複製開始は核様体周辺部で起こる事が示唆された。 (3)複製開始が起こる時期をDnaA蛋白質量が規定する可能性を、人為的にその発現量を制御することにより示した。また、spo0J破壊株において、開始点の分離に異常が生じ、過剰な複製開始が起こることが観察された。その影響はsoj遺伝子の欠失により失われ、一方、Sojの過剰発現は過剰複製を誘導した。Spo0Jは複製開始点の移動に働いており、Sojは複製開始に関与する遺伝子発現を制御していると考えられる。さらに、新たな複製開始制御蛋白質としてGTP結合蛋白質BexとYqeHを同定した。 (4)染色体分配において、セントロメアとして機能していると考えられるcis配列を細菌で始めて同定した。 (5)染色体の高次構造形成に関与しているSmc蛋白質と複合体を形成する新規蛋白質、ScpA, Bを同定した。それらの細胞内動態を解析し、Smcはレプリゾーム近傍に結合している割合が高く、Smcの染色体への結合はSpcABに依存することが示された。染色体DNAの複製直後にSmc複合体により染色体の高次構造が形成されると考えられる。
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