LIMキナーゼは、分子内にLIMドメインをもつ新規プロテインキナーゼである。我々は、LIMキナーゼが低分子量GTPaseであるRacの下流で活性化され、アクチン脱重合因子コフィリンのリン酸化を介して、アクチン骨格の再構築を制御していることを明らかにした。本研究では、LIMキナーゼの分子内相互作用による活性制御機構および上流キナーゼ(特にROCK)によるリン酸化による活性制御機構を解明することを目的とし、以下の結果を得た。 1)LIMキナーゼの限定分解や、変異体のキナーゼ活性の測定、in vitro結合実験などの結果から、LIMドメインは、キナーゼドメインと分子内で直接相互作用することによって、LIMキナーゼの活性を負に制御していることが推定された。細胞内ではLIMドメイン結合蛋白質が活性化因子として機能している可能性が考えられる。 2)LIMキナーゼの神経突起伸展・退縮における機能を明らかにするため、NlE-115神経芽細胞に野生型、ドミナントネガティブ型LIMキナーゼを導入した。その結果、ドミナントネガティブ型は、血清や活性型Rhoによる突起退縮を阻害した。LIMキナーゼは、Racだけではなく、Rhoの下流因子として神経突起の退縮にも関与することが推定された。 3)Rhoの下流で働くセリン/スレオニンキナーゼROCK(Rho-kinase)により、LIMキナーゼのキナーゼドメイン内のThr-508が特異的にリン酸化され、活性化されることを見い出した。
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