研究概要 |
細胞外刺激に感応した細胞骨格系のダイナミックな再構築は、細胞の形態変化、運動、分裂など細胞の基本活動において重要な役割を果たしているが、その応答機構の多くは不明である。本研究では、私達が同定した新規プロテインキナーゼ、LIMキナーゼ(LIMK1,LIMK2)及びその類縁キナーゼであるTESKのシグナル経路を中心として、アクチン細胞骨格の再構築を制御する分子機構の解明を目的として、以下の成果を得た。 1.LIMK1のLIMドメインは、キナーゼドメインと分子内相互作用によって、LIMK1のキナーゼ活性を負に制御していることを明らかにした。 2.LIMKはRacだけでなく、Rhoの下流で活性化されること、ROCKによってキナーゼドメイン内のThr-508(LIMK1)、Thr-505(LIMK2)がリン酸化され活性化されることを明らかにした。 3.TESK1はLIMKと同様にコフィリンをリン酸化し、アクチン骨格の再構築を誘導することを見い出した。TESK1は、インテグリンシグナルによって活性化されることを見い出した。 4.ハエのLIMKを同定し、アクチン再構築を促進することを見出し、LIMK経路が無脊椎動物においても保存されていることを明らかにした。 5.小脳顆粒細胞の神経軸索の形成および脊髄後根神経節細胞のセマフォリンによる突起退縮において、LIMKによるコフィリンのリン酸化が重要な役割を果たしていることを解明した。 これらの成果は、LIMK/TESK経路が細胞骨格の制御を介して多くの細胞機能に重要な役割を果たしていることを明確に示している。今後はこれらの成果に基いて、LIMK/TESK経路の時間的空間的制御機構ならびに細胞の形態と運動性の制御におけるLIMK/TESK経路の役割を解明することが重要である。
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