ツメガエルの後肢芽を、変態前期のstage52で切断すると、5本の指を持つ完全な後肢が再生されるが、指が明瞭となるstage56で切断した場合は、再生体の指の数は1-2本に減少し、全体の長さも極めて短い。 このような無尾両生類の再生能の変態に伴う変化は、完全な四肢再生能を持つ有尾両生類と四肢再生能をほとんど持たない哺乳類を結びつけるもので、哺乳類の四肢再生能を回復させる方法を見いだすのに重要と考えられる。本研究では、この四肢再生能の消失はどの組織、に依存しているのか、またどのような分子の消失が関係しているを明らかにし、再生能を回復させる事を目指した。 再生能が高いstage52の間充織を再生能が低下したstage56肢芽の切断した部分に移植し、間充織が宿主表皮に覆われ、再構成肢芽ができた後、切断、再生させると、正常な四肢が再生したのに対し、stage56の間充織をstage52肢芽に移植し、切断した場合は、再生はほとんど起こらなかった。この結果は、stage56での再生能の低下は間充織の変化によることを示している。 肢芽の発生を担うシグナル分子として、先端部上皮AERから分泌されるFGF-8、先端部間充織が分泌するFGF-10が知られている。ツメガエルfgf-8遺伝子、fgf-10遺伝子ともにstage 56肢芽では発現が減少していた。再構成肢芽を切断した場合は、stage 52間充織を用いた場合のみ、強い発現が見られた。 これらの結果は、ツメガエル肢芽の再生能は間充織の発生段階、特に間充織から分泌されて、先端部外胚葉に作用するFGF-10によって制御されていることを示唆している。そこで、ヒトのリコンピナントFGF-10をstage56の肢芽の切断面に添加したところ、fgf-8の発現がみられ、間充織から外胚葉へのFGF-10による制御が確認できた、さらに再生された指の数の増加が見られた。 今後このシステムの改良により、成体での四肢の再生が可能と考えられる。
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