研究課題/領域番号 |
11480219
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
松崎 文雄 東北大学, 加齢医学研究所, 教授 (10173824)
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研究分担者 |
布施 直之 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (80321983)
大城 朝一 東北大学, 加齢医学研究所, 助手 (40311568)
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キーワード | 非対称分裂 / 神経幹細胞 / prospero / miranda / 神経発生 / 細胞極性 / 上皮細胞 |
研究概要 |
ショウジョウバエの神経幹細胞は、それ自身と姉妹細胞に非対称に分裂する際、神経の運命決定因子である転写因子ProsperoやNotchシグナルの制御因子Numbを姉妹細胞に不等分配する。 これらの因子の不等分配は神経細胞の運命決定に必須なプロセスであり、本研究では、そのメカニズムと背後にある細胞極性の分子実体を明らかにすることを目標にしている。神経幹細胞の分裂に際して、アダプター分子であるMirandaがProsperoに直接結合し、その細胞内分布と不等分配を規定することを我々は明らかにしているが、そのMirandaの細胞内局在をを指標として、神経幹細胞の非対称性を制御する因子を系統的に検索することを行った。その結果、Mirandaが神経幹細胞とその姉妹細胞に等しく分配される突然変異をいくつか同定した。そのうち、ひとつについては、ショウジョウバエに脳腫瘍を引き起こすことが知られていたがん抑制遺伝子giant larvae(lgl)が原因遺伝子であることを突き止めた。さらに、他のがん抑制遺伝子を検索したところ、同じく脳腫瘍の原因遺伝子として知られるdiscs large(dlg)遺伝子の変異がlglと同一の表現型を示すことが判明した。両者は神経幹細胞の細胞表層に分布し、ProsperoとNumbの不等分配の両方に必要とされる。これらの事実から、これまでに知られている全ての神経運命決定因子を局在させる共通なプロセスが神経幹細胞には存在し、そこにdlg,lglが機能することが明らかにされた。遺伝的、および薬理学的な解析からは、lglが複数のmyosin分子種の活性を制御することにより、運命決定因子・アダプター分子複合体の細胞表層への局在に働くことが示唆される。この研究から、神経細胞の運命決定、分化因子の細胞内局在、がん抑制という従来関連が知られていなかった三つの現象に接点が見出された。
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