我々はGFP遺伝子を導入することによって着床前にトランスジェニックマウスかどうかを非侵襲的に判別できる系を作製することに成功している。本研究は、GFP遺伝子を性染色体に導入することによって着床前に雌雄を判別し、今まで未知の領域であった着床前における雌雄の違いをさぐることを目的として行っている。 すでに、FISHを用いたマッピングにより、GFP遺伝子がX染色体に導入されているX^<GFP>マウスを3ライン得ているので、これらを用いて、まず、X^<GFP>Yの核型を持つオスを作製した。そしてこれらを野性型の雌(XX)と交配して産子を観察したところ、蛍光を発する仔はすべて雌(XX^<GFP>)、無蛍光の仔はすべて雄(XY)であることを確認した。このことから、導入部位はY染色体との非相同領域に存在し、減数分裂の過程でGFP遺伝子はY染色体に移らず、作製したマウスは着床前における雌雄卵の分別に使えることが分かった。そこで次にX^<GFP>Yの雄と野性型の雌を用いて体外受精を行い、無蛍光の雄胚(XY)、蛍光を発する雌胚(XX^<GFP>)を蛍光顕微鏡で選別したのち、これらをグループごとに仮親に移植した。その結果、作製した3ラインの"green mouse"のいずれにおいても100%の精度で着床前に雌雄胚を選別できることが判明した。 現在、3000個程度の体外受精卵を作出し、それらを雌卵と雄卵のグループに分別した後、これを材料としてDifferential Display(DD)法により転写レベルで着床前の卵子において雌雄に発言の差が認められる遺伝子を探索しているところである。
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