雌雄の分化が初めて明らかになるのは胎生11日ごろである。それ以前に雌雄を判定するには細胞の一部を取り出して、遺伝子を検査するという煩雑な方法をとることが必要である。我々は、性染色体上に蛍光蛋白質を作らせる遺伝子を導入した遺伝子操作マウスを作製した。このマウスの受精卵では着床前の胚からも緑色の蛍光が発せられることを見出した。GFP遺伝子を組み込まれたX染色体をもつ雄マウスを交配させると、X精子に由来する受精卵だけが緑色の蛍光を発する。この方法を用いて、これまで不可能であった非侵襲的な着床前の性別判定を行うというアプローチにより生殖細胞の機能解析を行った。 着床前の雌雄胚における遺伝子発現の差異を解析するために、まずGFP由来の蛍光の有無により雌雄の判別を着床前の発生段階で完全に行えることを実証した。合計6千個にのぼる受精卵について雌卵、雄卵に分別した、そして各グループからmRNAを抽出しdifferential display法を行った。現在のところ新規遺伝子の発見には至っていないがX染色体上に目印として導入したGFP遺伝子が雌卵において特異的に発現しているものとして検出され、この系が確実に動いていることが示された。 この系を用いて雌雄卵において発現量に差のある遺伝子の検索を続行中であり、候補遺伝子のしぼりこみを行っている。
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