本研究は、性染色体にGFP遺伝子を導入した遺伝子改変マウスを作製し、これまで不可能であった非侵襲的な着床前胚の性別判定を行うというアプローチにより、簡便な雌雄の産み分け法の確立を目的に行ったものである。 これまでに、GFP遺伝子をX染色体に導入したマウスを使うことにより、GFP由来の蛍光の有無で雌雄の判別を着床前の発生段階で100%正確に行えることを実証した。この結果に基づき、合計6000個にのぼる受精卵についてGFPの蛍光をもつ雌胚と蛍光をもたない雄胚に選別し、ディファレンシャルディスプレイ法やサブトラクション法を用いて遺伝子発現の差異をRNAレベルで解析した。その結果、雌胚特異的に発現する遺伝子としてマーカーとして発現させたGFP遺伝子を含む数個の遺伝子が検出された。しかし、残念ながらディファレンシャルディスプレイ法により検出された遺伝子の発現を再び、雌雄の卵子において検証したが明らかな差異をもつ遺伝子として検証することができなかった。 さらに、サブトラクション法をもちいて差異のある遺伝子の検出を試みた。その結果、現在合計20個程度の雄胚特異的遺伝子、雌胚特異的遺伝子の候補をとることができた。これまでに約半数のものについて雌雄胚での差を検証したが明らかな差異を示すものは得られていない。しかし、初期胚特異的に発現する遺伝子群を単離することができたのでこれらの発生における役割を遺伝子ノックアウトなどの系を含めて検証を行う基礎が固められた。
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