研究概要 |
本研究の目的は生命の維持に必須である消化器官の形態形成と,主として上皮細胞の分化に関わる分子発生生物学的研究を行うことである。 平成11年度には,ニワトリ胚前胃(腺胃)の腺上皮細胞における,消化酵素ペプシンの前駆体であるペプシノゲンECPg遺伝子の発現調節機構を解明した。 ECPg遺伝子の上流にはSoxおよびGATAという転写因子の結合配列があることがすでに明らかになっている。従ってこれらの転写因子がECPgの転写制御に関係している可能性があるので,これらの因子の遺伝子の発現パターンを解析した。その結果,cSox2は腺上皮細胞で発現が低下し,一方cGATA5の発現は上昇することが示された。この結果から,前者はECPgの転写を抑制し,後者は促進するという仮説がたてられた。ついで,ECPgの上流1kbをルシフェラーゼにつなぎ,我々の研究室で開発したエレクトロポレーション法で上皮細胞に導入することによって,上記の仮説を検証できた。しかもcGATA5は結合サイトを介して働くが,cSox2はサイトがなくても有効であることが示された。加えて,ゲルシフトアッセーによってcGATA5が結合サイトに結合することも確認された。これにより,胃腺上皮細胞のペプシノゲン遺伝子の発現調節機構の一端が初めて解明された。
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