様々な妊娠時期のマウス胎仔から取り出した始原生殖細胞を用いて、体外培養下で減数分裂へ自律的に移行する性質をどの時期の始原生殖細胞が獲得しているかについて解析したところ、生殖巣へ到着前の移動期においても減数分裂へ移行する性質を既に保有することを明らかにした。また雄胎仔から取り出した雄性始原生殖細胞についても生殖巣へ到着直後の時期までは培養下において減数分裂へ移行する性質を示すが、12日齢以降に分離した場合は前精原細胞としての性質を示した。さらに研究を進める中で、対外培養下の生殖細胞が減数分裂へ移行して卵母細胞に分化するプロセスをLIFの添加またはそれのレセプターとして働くgp130の活性化が強く阻害することを発見した。そこで、gp130遺伝子を破壊したノックアウトマウスを用いて検討したが、これまでのところでは明確な影響は見い出せなかった。引き続き、始原生殖細胞が雌雄生殖細胞へと性分化を行う段階を制御する因子を解明するために、胎仔精巣の体細胞によってつくられることが想定されている雄化因子(減数分裂抑制因子)についての解析を行い、まずは雄体細胞の培養上清や共培養が生殖細胞の減数分裂への移行に与える効果を調べたが、これまでのところは明確な結果は得られなかった。また、胎仔生殖細胞では大規模な細胞死が起きるが、アポトーシス抑制機能を持つbcl-x遺伝子欠損ヘテロマウスにおいて、雄性特異的に生殖細胞の大規模なアポトーシスが起きていることを発見し解析を行った。さらに、ショウジョウバエにおいて生殖細胞の発生に重要な役割を果たしているtudor遺伝子に関連する遺伝子を哺乳類で始めて同定して解析を行った。
|