機能的磁気共鳴画像(fMRI)の登場により、ヒト高次機能研究が新時代を迎えたことには議論の余地が無い。しかし、fMRIの「みかけの容易さ」は同時に様々な問題点を生み出し、現在、1.5T以下の装置で施行されている90%以上のfMRIに正当性の問題が残ると批判されている。fMRIが期待通りの高い分解能をもって正当性のあるデーターを供給するためには、いくつもの高いハードルを越えなければならない。本研究はfMRI装置として最適化された超高磁場装置による信頼性の高い高分解fMRIを基盤とし、神経科学において急務とされるヒト言語機能の系統的解明を目指している。 言語機能の脳局在は最初に習得した言語によって著しく影響を受ける。漢字に代表されるsemanticsymbolのdecodingを必要とする言語では左半球のsuperior temporal sulcusの後部が特異的に使われ、alphabetに代表されるsyllableによるsymbolic combinationを必要とする言語では両側のlingual gyrusが特異的に用いられることが判明した。すべての言語に共通なsymbolic decoding部位は左半球のfusiform gyrusであった。加えて、文字symbolそのものの解読に加えて文字symbolの位置情報による解読が必要な場合には(音符、手話)右半球のtransverse occipital sulcusが重要な働きをもつ。 聴覚障害の被験者を対照とした検索では、物理量としての「音」の存在が、「言語ネッワーク」の使用に必須であり、物理量としての音から完全に切り離された個の読字機能は「非言語記号解読ネットワーク」の使用にいたることを突き止めた。これらの機能局在には民族的なbackgroundが影響を与えないことも判明している。 機能局在とその特異性は脳機能を司る基本的ルールに則って誕生するべきである。最も可能性の高いものは自己形成である。読字機能の特異性は、視覚情報がdecimationを基本としたreplica形成による情報処理をその基本構造にもつことを強く示唆するデーターを提供している。
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