発達脳においてGABAは興奮性か抑制性か?

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 11480239
• 研究機関: 山口大学
• 研究代表者: 中村 彰治 山口大学, 医学部, 教授 (80112051)
• 研究分担者: 石田 佳幸 山口大学, 医学部, 助手 (20325210) ; 富士岡 隆 山口大学, 医学部, 助手 (50304473) ; 坂田 義行 山口大学, 医学部, 講師 (10034927)
• キーワード: 胎仔脳 / 上丘 / 細胞内Clイオン / GABA / 光学的測定 / 蛍光色素 / 臍帯結紮 / 低酸素

研究概要

ラット胎仔脳の上丘において、上丘局所の電気刺激によって誘発されるin vivo細胞内Clイオン濃度の上昇が、臍帯結紮による低酸素によってどのように変化するかを母体と臍帯でつながった胎仔で観察した。妊娠ラット(Sprague Dawley rat、3ヵ月令)をウレタン麻酔(1.3g/kg、腹腔内投与)し、母体ラットを仰臥位にして、帝王切開を行った。胎仔を子宮より取り出し、頭部を固定台に歯科用セメントで固定し上丘表面を露出した。上丘の吻側部に電気刺激用電極を植え込んだ。Clイオン感受性蛍光色素を上丘表面に投与した。この蛍光色素が細胞内にロードされるまで1時間おいた後、胎仔-母体標本を細胞内Clイオンの光学的測定装置にセットした。臍帯結紮は、外科手術用の小クリップを用いて行った。また、臍帯再還流のために、結紮部位に血管拡張剤のパパベリンを塗布した。
胎仔12例において、臍帯結紮による細胞内Clイオンの動態について検討した。上丘表面の中央部を20区画(1区画:0.1mm平方)に分け、複数の区画で、かつ複数回の刺激で5%以上反応をもって有意の変化とした。また、Clイオンの流入と流出の両方の区画が各々複数区画ある例を混在群とした。臍帯結紮前では8例においてClの流入が見られた。しかし、結紮後3時間では、流入群は1例に減少し、混在群が10例に増加した。結紮前では5例中5例において、また結紮後では8例中2例において、細胞内Clイオン濃度変化はbicucullineによって減弱した。すなわち、これらの結果は、上丘局所刺激によって誘発されるClイオンの流入が低酸素後には流出に変わる可能性を示唆している。また、これらの細胞内Clイオン濃度変化はGABA受容体を介すると考えられる。

研究成果

• [文献書誌] Hashimoto,M.: "Modulating effects of prenatal stress on hyperthermia induced in adult rat offspring by immunological and non-immunological stressors."Physiol.& Behavi.. (in press). (2001)
• [文献書誌] Fujioka,T.: "Mild prenatal stress enhances learning performance in the non-adopted rat offspring."Neuroscience. (in press). (2001)
• [文献書誌] Sakata,Y.: "In vivo electrical activity of brainstem neurons in fetal rats during asphyxia."Brain Res.. 871. 271-280 (2000)
• [文献書誌] Nishiike,S.: "Cholinergic influence on vestibular stimulation-induced locus coeruleus inhibition in rats."Acta Otolaryngol.. 120. 404-409 (2000)
• [文献書誌] Tan,N.: "Involvement of central β-adrenoceptors in the tachycardia induced by water immersion stress in rats."Physiol.& Behavi.. 68. 291-297 (2000)
• [文献書誌] Iqbal Chowdhury,G.M.: "Induction and adaptation of Fos expression in the rat brain by two types of acute restraint stress."Brain Res.Bull.. 52. 171-182 (2000)