網膜双極細胞からのグルタミン酸放出機構に関して実験的検討を行い、以下の成果が得られた。 1.シナプス小胞のプールについて、開口放出に伴う膜容量変化と放出されたグルタミン酸を計測した。双極細胞に長い(2秒以上)脱分極パルスを与えると、グルタミン酸は一過性に放出されると共に持続性にも放出された。既に報告した即時放出可能な第1のプールと遅れて放出される第2のプール以外に、第3のプールの存在が示唆された。 2.双極細胞軸索終末部のプロテインキナーゼCを活性化させると、グルタミン酸の放出量が増加した。これは、放出確率の上昇ではなく、プールサイズの増大であることがわかった。プールサイズの増大は、第2のプールで生じていた。電子顕微鏡で微細構造を観察したところ、プロテインキナーゼCの活性化によって、リボン周辺にシナプス小胞の集積が認められた。 3.双極細胞から神経節細胞へのグルタミン酸作動性シナプス伝達は、グルタミン酸トランスポーターの働きで応答の減衰が速められていることが明らかになった。 4.アマクリン細胞からの抑制性フィードバックにより双極細胞軸索終末部のGABAc受容体が活性化されると、グルタミン酸の放出量が制限されることが明らかになった。GABAc受容体の働きを止めると、双極細胞から放出されたグルタミン酸はシナプス間隙を漏出する可能性が示唆された。
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