研究課題/領域番号 |
11480247
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
金子 章道 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (00051491)
|
研究分担者 |
青木 香織 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (00276213)
金田 誠 慶應義塾大学, 医学部, 専任講師 (30214480)
|
キーワード | 苦み / 単一チャネル記録 / ノイズ解析 / キニーネ / カルシウムイオン / チャネル電導度 / 味細胞 / カエル |
研究概要 |
視覚や嗅覚受容機構に比べ、味覚受容機構には未解決の問題が多い。苦み受容機構をとってみても、細胞内二次伝達物質の関与が示唆されていたが、1996年にわれわれはホールセルクランプ法による実験でキニーネがカエル味細胞膜の陽イオンコンダクタンスを上昇させることを報告し、さらに最近の実験で味細胞のアウトサイドアウトパッチ膜にキニーネを投与したところ、チャネルの開口を観察することが出来た。この結果はこれまでの苦み受容機構に関する仮説とは全く異なっている。そこで本年度は、苦み受容チャネルの性質を精査するため、アウトサイドアウト膜標本によって得られたチャネルを記録し、その性質(イオン透過性、細胞部位による分布、作用物質のスクリーニング、開口の動力学的検索など)をホールセル記録法のデータをノイズ解析したものと比較検討した。アウトサイドアウト膜標本にキニーネを投与するとチャネルの開口確率が上昇した。単離した味細胞をホールセル記録し、キニーネを投与すると内向き電流が生じ、電流の揺らぎは投与量に依存して増大した。これらのデータから単一チャネルコンダクタンスを求めるといずれも約5pSであった。チャネルコンダクタンスは外液のカルシウム濃度に異存し、無カルシウム液中では12pSに上昇した。カルシウムの有無によってキニーネとの親和性が変化しK1/2値が無カルシウム液中では0.48mMであったものが1.8mMのカルシウム存在下では2.8mMに上昇した。スペクトル解析によってパワー分布曲線を求めたところ、いずれの標本においてもこの曲線は2つのローレンツ曲線によって近似され、カルシウムの有無は遮断周波数には影響しなかった。これらの結果から、味細胞における苦味応答は細胞表面にあるチャネル開閉によって発生しているという結論が立証された。
|