レクチンと酵素を用いた酵素累積膜の作製条件の最適化を検討した。その結果、0.1mg/mlレクチン溶液(ダルベッコリン酸緩衝液生理食塩水、D-PBS)に電極を室温にて20分程度浸した後にD-PBSで洗浄すると、電極表面にレクチンがほぼ単分子層に吸着することがわかった。レクチン溶液の濃度、緩衝液の種類、処理時間などを種々変えて同様の実験を行ったが、上記の条件が最適であることが判明した。また、同様の条件で、レクチン修飾電極を酵素溶液に浸すと、レクチン層の上に酵素が固定化されることがわかった。この操作をくり返すことにより、酵素累積膜が作製できることが判明した。次に、作製した酵素超薄膜の触媒活性の評価を行った。酵素超薄膜修飾電極を緩衝液に浸し、酵素基質と電子メディエーター(フェロセン誘導体)を添加した際のサイクリックボルタンメトリー(CV)の電流応答を測定して活性を調べた。CVの応答電流は累積膜の酵素層数に比例して増大した。この結果は、使用した電子メディエーター分子が累積膜の中に容易に浸透したいくことを示唆した。同時に、累積膜中の酵素の触媒活性が保持されていることを示している。フェロセンメタノール(電気的中性)、フェロセンカルボン酸(アニオン)、トリメチルアミノフェロセン(カチオン)、の使用した3種類の電子メディエーターのうち、フェロセンメタノールが最も良好なメディエーターとなることがわかった。これは、酵素累積膜の電荷が負であることと関係すると考えられるが、詳細は検討中である。 さらに、ポリマーを用いたタンパク質累積膜の作製も検討した。ポリアニオンとアビジンの累積膜が良好に作製できることが明らかになった。
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