現在、劇症肝炎をはじめとする肝炎には有効な治療法がない。これまでに肝炎の発症には実質細胞のapoptosisが主なメカニズムであることが明らかになってきた。実際、実験的肝炎はapoptosisを抑制するcaspase阻害剤により抑制することができる。しかしcaspase阻害剤には細胞特異性がないため、薬剤としては種々の副作用を生じる。そこで我々はcaspase阻害剤を肝に集積させるため、アシアロ糖タンパクレセプターを認識するPoly-N-p-Vinylbenzyl-D-lactonamide(PVLA)をキャリヤーへの標的指向性の付与に用い、ポリ乳酸(PLA)/PVLAnanoparticle(NP)にcaspase阻害剤(Z-ASP)を含入し、実験的肝炎に対する効果を検討した。PVLA水溶液中にCH_2Cl_2に溶解したPLAとZ-ASPを滴下し、超音波処理を行い、乳化させた後溶媒を留去し、Z-ASP-PLA/PVLA NPを得た。リコンビナントcaspase3による基質Ac-DEVD-MCAの加水分解を利用し、PLA/PVLA NPに含まれる活性を持つZ-ASP量を決定した。PLA/Rhodamine-PVLA NPにcalcein-AMを含入し、フローサイトメトリーや共焦点レーザー顕微鏡を用い、肝実質細胞との相互作用と薬物の細胞内リリースを確認した。実験的肝炎に対するZ-ASP PLA/PVLA NPの効果をLDH活性測定により評価した。Z-ASP-PLA/PVLA NPに含入したZ-ASPは活性を保持しており、PLA/PVLA NPは肝実質細胞特異的に相互作用し、また1時間以内に細胞内へ取り込まれた。さらにZ-ASP-PLA/PVLA NPは、IFNγ誘導細胞死をZ-ASP単独作用より低濃度で抑制した。これらからPLA/PVLA NPは、肝実質細胞へのターゲティング型ドラックキャリアーとして有効であると考えられる。
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