現在、劇症肝炎をはじめとする肝炎には有効な治療法がない。これまでに肝炎の発症には実質細胞のapoptosisが主なメカニズムであることが明らかになってきた。実際、実験的肝炎はapoptosisを抑制するcaspase阻害剤により抑制することができる。しかしcaspase阻害剤には細胞特異性がないため、薬剤としては種々の副作用を生じる。そこで我々はcaspase阻害剤を肝に集積させるため、アシアロ糖タンパクレセプターを認識するPoly-N-P-Vinylbenzyl-D-lactonamide(PVLA)をキャリヤーへの標的指向性の付与に用い、ポリ乳酸(PLA)/PVLA nanoparticle(NI))にcaspase阻害剤(Z-ASP)を含入し、実験的肝炎に対する効果を検討した。前年度では、このナノパーティクルがin vitroに於て、肝細胞と特異的に相互作用を行い、肝細胞に取り込まれ、長時間にわたって内容物を徐放することを報告した。本年度ではこのナノパーティクルの抗肝障害作用について検討した。このナノパーティクルは劇症肝炎の原因であるFas介在性の肝細胞障害を効果的に抑制し、また、in vivoにおいてT細胞介在性であり、人肝炎のモデルとされているConAによる肝炎を抑制した。このとき、このナノパーティクルは生体内で特異的に肝臓組織に集積し、さらにこれまでの薬剤とは比較にならないほど長時間にわたって肝臓において薬物の徐放を行うことが証明された。
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