研究概要 |
1.構造材料の電磁波特性評価 前年に続き、建築材料の電気特性を空間定在波法により測定・評価する具体的な測定法の確立を目指して研究を行った。当該手法の精度を著しく低下させる主たる要因は有限寸法の測定材料端面で散乱された電磁波が定在波分布に影響を与えるためで、無限に大きな測定材料を用いられない以上、この後方散乱波が定在波分布に与える影響を合理的に排除するしかない。本研究では、波源、反射波源、散乱波源を仮定した測定系のモデルを構築、このモデル各波源の振幅と位相を未知数として、実測による定在波パターンがモデルによる定在波パターンと最もよく一致するようその値を定め、定在波分布測定のこの結果からミューラー法によって建築材料の複素誘電率を定める手法を開発した。 モデルを用いた定在波測定法をベースとする材料の複素誘電率測定法を用い、ガラス、コンクリートスラブ、石膏ボード、壁材であるサイディング3種、屋根用の断熱構造材の複素誘電率を測定し、データベース化した。測定周波数は850,1100,1500,1900,2400MHzである。 2.材料と空間のモデル開発、およびその解析による低被曝化手法の研究 アクリルとガラスの2種の誘電体材料を組み合わせて、周波数選択性を有する合成板材を作る可能性を検討した。2種の誘電体の帯を寄せ木造りのように広さ方向に並べて板を作る場合と、2種の板の片面を互いに組み合わせると平板の板となるよう表面形状を工夫した場合の二通りの合成板材を考え、平面波に対する電磁波遮断周波数と、板材の内部構造の各寸法および材料の複素誘電率との関係を明らかにした。結果として、2種の誘電体材料の板厚と合成板の厚みが電磁波透過特性における周波数選択制を支配するが、2枚の板材の断面形状の違いは殆ど影響を与えないことを明らかにした。以上の研究を通じ、伝統的建築材料の形状を工夫することにより特定周波数で選択的に電磁波を減衰させる可能性を示した。
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