研究概要 |
地球システムにおける物質・エネルギー循環を解明するため,地表面状態と水循環との関係,人為的な二酸化炭素放出と吸収過程,大気透過率変化の地表面温度への影響などの素過程を検討し,各サブモデルを作成した。さらに地球を大気・海洋・地圏・陸域植生・腐植の5つのリザーバに分割したグローバルな炭素循環モデルを構築し,大気中二酸化炭素濃度や炭素収支の経年変動データを制約条件として最適パラメータの決定と感度解析を行った。その結果,グローバルな陸域植生の純一次生産量は1920年以降増大傾向にあり,1980年代には10年で10%程度の増加傾向であることが示された。 AVHRR,TM,ASTERなどの地球観測衛星データの解析法の検討を行った。センサ劣化や衛星軌道変化などに起因する長期ドリフトの影響を取り除くため,無植生域と植生密集域を用いた植生指数の補正法を開発した。衛星データから抽出された植生指数の経年変化域について愛知県内のテスト地域で現地調査を実施し,植生などの地表被覆が実際に変化したことを確認した。補正を行った植生指標データに基づき,グローバルな純一次生産量の変動解析を行ったところ,10年で6%の増加傾向が認められた。今後,モデルによる結果との差異の究明を進める予定である。また,次年度に解析に用いる予定であるASTERデータの特性の検討も行った。 一方,実験室内で分光反射スペクトルを取得するため,現有のフーリエ変換赤外分光器(FTIR)により可視・近赤外域でも測定が可能となるよう追加オプションの搭載を行った。この装置と野外用分光放射計により,植物の可視・近赤外域での分光反射率測定を行い,植物に特徴的な葉緑素による可視域での吸収と近赤外域での高い反射率を確認した。
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