本研究は、擬似体液を用いたバイオミメテックプロセスにおけるアパタイト核形成の機構を明らかにすることを目的とする。 純チタン及びTi-6A1-4V合金基板を5MのNaOH水溶液中に60℃で24時間浸漬し、600℃で1時間加熱処理することにより、その表面にチタン酸ナトリウムの層を形成させ、これをヒトの体液にほぼ等しい無機イオン濃度を有する擬似体液に種々の期間浸漬した。擬似体液浸漬による基板表面の組成及び構造の変化を走査型電子顕微鏡観察、薄膜X線回折、X線光電子分光分析、及び炭素・水素・水分分析により調べ、基板浸漬による擬似体液の元素濃度の変化を高周波誘導結合プラズマ発光分光分析により調べた。 純チタン及びTi-6A1-4V合金の表面に形成されたチタン酸ナトリウム層は、擬似体液中において、急速にナトリウムイオンを溶出してTi-OH基を形成し、同Ti-OH基は、直ちに液中のカルシウムイオンと結合してチタン酸カルシウムを形成し、同チタン酸カルシウムはかなり遅れて液中のリン酸イオンと結合してアパタイトを形成することが明らかになった。このようにして形成されたアパタイトは、骨のアパタイトに比べ、多量の塩素イオン及び少量の炭酸イオンを含有し、低い格子定数cを示すことが明らかになった。
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