研究概要 |
資料収集については,以下の項目について随時行なった。1)近代京都絵図・古地図,2)市街航空写真(1946,69,95年),3)近代京都観光図書,4)近代京都新聞マイクロフィルム(明治〜戦前期昭和,京都大学未所蔵分)の購入,5)京都関連他都市戦前期資料,6)明治期から戦前期の京都保勝会(名勝地保存組織)の活動に関する資料の発掘と記録(京都市歴史資料館,平安神宮と協力) 研究分担者の討論の場である研究会を26回開催し,延べ37人の研究発表を行った。うち20人は外部からの招待後援者であり,分担者がカヴァーしない領域を補った。そのほか,3度のシンポジウムに講演者を提供した。 研究成果としては以下のものが挙げられる。 ・明治の市制施行前後の府市の為政者と市民層の利害を反映する議員の関与した年改善事業の内実や政争の様子が次第に明らかにされつつあり,市区改正的な都市事業の時代(明治から大正期初期まで)と旧都市計画法施行以降とで大きく変化する京都在住名望家達のイニシアティブと諸官庁勢力(農商務省,内務省)の影響力行使について,具体的な都市改善計画の中で明らかにしつつある(落合,高久,小林,丸山,伊従)。 ・京都における明治期以降の森林風致政策を含む歴史的名勝保護から近年の世界遺産保護までの政策史の過程が,林業政策,社寺取締政策や都市計画の政策史との関連で明らかにされつつある(高木,丸山,伊従)。 ・「小京都」という概念の普及現象を,全国の小京都へのアンケート調査,さらには文献調査によって行った(金坂)。 ・産業及び市街地の発展を,1912年の『京都地籍図』と地籍台帳により解析を試みた(山田)。 ・西洋学問の導入過程に関して御雇外国人の役割,京都の実業家をはじめとする近代化の担い手たちの動きなどに焦点をあてた調査,研究を行った(鈴木)。 ・古都としてのイメージ形成を,京都御苑の整備や博物館などの文化財保護の問題を政治文化史的に考察した(高木)。 明治22年の仮製地図の登場以降,京都の都市絵図は正確な測量図の時代に入る。しかし,民間に流布した市街図や都市計画図面類の,公的機関による収集保存状況は不十分である。その点で、近世近代京都絵図を多数収集した「大塚コレクション」が京都大学や京都市歴史資料館に寄贈され,全貌が2001年度になってようやく明らかにされたことは,本研究にとっても一大朗報であったが,詳細な研究に着手するには遅すぎた。京都についての他の図像資料の網羅的な研究と併せ,次の研究計画「近代京都イメージ形成の研究」の主要主題として,研究計画を立て直すこととしたい。
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