研究概要 |
動物細胞の細胞膜中には非イオン性界面活性剤に不溶性で低比重を示す領域が存在する。この領域は細胞膜中にただよう筏という意味でラフトとよばれている。ラット脳由来ラフトの構成因子を解析し,脂質成分としてコレステロールとフォスファチジルコリンの集積を見い出した。コレステロールの集積に関与するタンパク質因子としてカルモジュリン結合タンパク質であるNAP-22を見い出した。またNAP-22とコレステロールの結合がカルモジュリンにより阻害されることを見い出した。またこの領域に局在するグリコシルフォスファチジルイノシトール(GPI)-アンカータンパク質を解析し,F3(contactin),T-cadherin,Thy-1等の集積を見い出した。また3つのイムノグロブリンドメインを持つIgLONと呼ばれる細胞接着因子群の集積とこれに属する新規タンパク質(キロン)を見い出した。キロンはシナプス後部に局在する細胞接着因子であり成体においても多く発現している。これらの知見はラフトがシナプス構築に大きく関わることを示している。さらに,カルシウム依存的にラフトと結合する因子を解析し,C-キナーゼ,アネキシンVI,カルモジュリン,ニューロカルシン等がカルシウム依存的にラフトに結合することを見い出した。また細胞骨格制御因子の1つであるゲルゾリンがラフトに存在することを見い出した。これらの結果はラフトがカルシウムシグナルと密接に関連していること,そしてラフトが情報に応じて流動的に構成因子の変換を行っていることを示唆している。
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