研究概要 |
哺乳類の種間では、各染色体上での遺伝子の配置が部分的に保存されていることから、哺乳類の各種動物の染色体とマウス,ヒトの染色体の対応関係が正確に明らかとなれば、ヒト,マウスで大量に蓄積されている染色体上の遺伝子の位置に関する情報が他の動物にも利用可能となり、各種動物の遺伝学的な解析は大きく発展するものと思われる。そこで本研究は、種間で保存されている配列を用いた染色体地図を作製することにより,各種動物の染色体地図とマウス,ヒトの染色体地図の対応を明らかとする哺乳類の比較染色体地図を構築し、これら動物の種々の形質の分子遺伝学的解析のための研究基盤を確立することを目的とした。 本研究では,特にこれまでの研究により,遺伝性疾患等の特定の遺伝的形質を支配する遺伝子が存在することが明らかとされている,ウシの第1,第6染色体,カニクイザルの第2,第11染色体,イヌの第10染色体,ラットの第10,第12染色体上の特定の領域を中心に比較染色体地図を構築することを試みた。 マイクラサテライトマーカーを用いた連鎖解析により連鎖地図を作成するとともに,放射線雑種細胞法(RH法)を用いた物理地図の作成を行った結果,これらの染色体における機能的遺伝子を含む染色体地図が作成された。その結果,ウシの第1染色体,第6染色体の当該領域は,それぞれヒトの第3染色体,第4染色体と対応していること,カニクイザルの第11染色体はヒトの第10染色体に対応し,第2染色体はヒトの第7染色体と第21染色体が融合したような形態となっていることが明らかとなった。これらの結果はウシやカニクザルにおいて報告されている遺伝性疾患の原因遺伝子の解析のために有用であると考えられる。
|